2018-10-01


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2018-05-21

勝手に組句(短歌ヴァージョン)




蚊柱を連れみづいろの都まで   西原天気

「はがきハイク」第18号より。「蚊柱を連れ」の部分に魔術的な魅力があり、ふわりと宙に浮かぶようにして都に赴く人が目に見えるようです。この句の夢遊(浮遊)力については、蚊の乱舞が煙に似ていることも関係しているのでしょう。わたしにとって、とてもしっくりくる情景。

入れ墨のごとき地図ありしんしんと鈴のふるへる水の都に
小津夜景

* * * * *

穴ひとつ空に残して雲雀の死   笠井亞子

大伴家持〈うらうらに照れる春日に雲雀あがりこころ悲しも独りし思へば〉の時代から、雲雀は和歌において自由主義的な昂揚感のある素材。いっぽう俳諧においてはそうではなかった(当ジャンルの「昂揚」は往々にして渋好み=反青春的矜持として顕れる)。この句の「死」にはフランス象徴主義的な印象を受けました。なお「はがきハイク」は亞子さんによる素敵な鳥のイラストが見られるのもうれしい。

雲雀の血すこしにじみしわがシャツに時経てもなおさみしき凱歌
寺山修司

2018-05-20

青葉の孤独



きのう画材屋さんからの帰りしな、新しい地ビールを発見しました。お試しに一種類ずつ購入し、夕ごはんはライ麦パン、揚げ豆腐のサラダ、果物の盛り合わせ、そして今年はじめてのビールに。

しみじみとわれの孤独を照らしをり札幌麦酒(さつぽろビール)のこの一つ星
荻原裕幸

お酒を扱った句歌については愛唱性の高いものが好み。上の歌については、わたしはかってに初夏の風景を想像しながら読んでいます。

なぜかというと、この歌人は初夏を詠むのがとてもうまいから。わけても淡い光に佇みながらその光に決して心を開き切らない、いまだ蒼く張りつめた類の孤独といったものを美しく詠むので、麦酒の歌もその雰囲気にそっと重ねるようにして味わうと、不思議な酔いに浸れるのでした。

われにはわれの時間流るる悲しみよ追憶はつねに一人の青葉
荻原裕幸

2018-05-19

恋愛目線で読む「たてがみ」



「オルガン」を読んでいたら、浅沼璞氏の文章に高柳重信のこんな俳句を見つけました。

たてがみを刈り
たてがみを刈る

愛撫の晩年   高柳重信

詩として最高。ぐっとくる。ただし、女性の書き手がシャーマニックな情緒に安易に流れるときに似た、いくぶん「とほほ」な印象は拭えません。「たてがみ」という語の使い方に、あまり知的とはいえない男の恍惚(青二才のマッチョ的ロマン)が露わで、一歩引いたダンディズムがないんですよね。その点、

たてがみを失ってからまた逢おう   小池正博

こちらも男のロマンにあふれているけれど、でも「たてがみ」がしっかりと客観視されている分、ああ、大人の色気があるな、と思います。あとこの川柳、ヘミングウェイの1行小説(six-word novel)のような風格もありますよね。この手の大らかな散文性は川柳の得意とするところ。

男性の「たてがみ」は金や権力とさほど変わらないモチーフなので、よほど上手に詠まないと阿呆らしいことこの上ない。そしてまたそっと言い足すならば、女性というのは案外「たてがみ」のない男性を愛おしいと思うものなのでした。

たてがみを手紙のやうに届けたい裸足で眠る樹下のあなたへ
小津夜景

2018-05-18

三つの「オルガン」



今まで「オルガン」へのささやかな不満としてあったのが、宮本佳世乃の発言が少ないこと。それがこの最新号、なんと白井明大×宮本佳世乃の対談が載っています。大変おもしろいです。あと白井氏のゲラへの手の入れ方が気持ち良かった。別段どうということもないのに、息づかいがふっとつかめてしまう、そんな感じの語り口。ふだんはこんなこと考えながら読むタチじゃないので、ひょっとすると自分の知っている誰かの息づかいと近かったのかもしれません。

みずうみのひらくひばりのなかに空  宮本佳世乃

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白井氏の新刊『一日の言葉、一生の言葉』(草思社)の刊行記念として、5/20(日)19時から東京・下北沢の本屋B&Bにて「オルガンの響きとともに、てくてくと言葉をあるく」というトークイベントがあるようです。宮本佳世乃、鴇田智哉、福田若之の三氏が出演されるもよう。

* * * * *

さいきん出たばかりの「豆の木」に、宮本さんの現代俳句新人賞受賞作に対する評「器に手を当てる 宮本佳世乃『ぽつねんと』における〈風景〉の構図」を寄稿しています。俗に「オルガン調」と称されるレトリックがどのような文法構造と身体把握に拠っているのかを、漢詩における倒装法から解説しました。

2018-05-15

パリの日大闘争



去年の冬にパリの裏通りを歩いていたら、同居人が「あれ、秋田明大じゃない?」だったか「山本義隆じゃない?」だったかは忘れたけれど、そんな感じのことを言ってわたしを急に引き止めたんです。

え?ここパリなのに?と思いつつ周囲を見まわすと、本人が歩いていたわけではなく、日本の学生運動にまつわる印刷物をいっぱい展示したギャラリーっぽい本屋さんが、ありました。

そのときの写真が、今朝ぐうぜん見つかったのでアップ。

2018-05-12

花粉歳時記



毎朝スマホで、今日はなんの花粉が飛んでいるのかを確認します。コート・ダジュール地方では、今日からオリーブの樹が始まりました。

あとはイトスギ、ヒカゲミズ、ナラ、イネ科の草。きのうまではシラカバがひどかった。毎日少しずつ、植物の写真が変わってゆくのがおもしろく、ささやかな歳時記として眺めてしまいます。

2018-05-11

新刊『カモメの日の読書』に登場する漢詩文一覧



また即席ポスターをつくっちゃいました。canvaを利用したのですが、あそこは日本語フォントがほとんどないのですね。ざんねん。以下、掲載順に並んでいます。

「旅夜書懐」杜甫
「贈元稹抄」白居易 
「飲酒二十首 其七」陶淵明
「滕王閣」王勃 
「西域河中十詠 其一」耶律楚材
「蓼花」陸游 
「芍薬」謝希孟
「山園小梅」林逋 
「祭猫」梅尭臣
「春日酔起言志」李白
「春夜宴桃李園序」李白
「從斤竹澗越嶺溪行」謝霊運
「寄殷協律」白居易
「新城道中二首之一」蘇軾
「食茘枝」蘇軾
「飲酒二十首 其五」陶淵明
「飯罷戯示隣曲」陸游
「蔬圃絶句七首 其二」陸游
「梅村」呉偉業
「春前」孟今年(大田南畝)
「春暁」孟浩然
「無題」夏目漱石
「相思」王維
「送沈子福之江南」王維
「昼臥」厲鶚
「無題」頼山陽
「三月念三遊嵐山有憶」江馬細香
「唐崎松下拝別山陽先生」江馬細香
『西遊記』第一回より抄出 呉承恩
「秋声」余林塘
「題秋江独釣図」王士禎
「十一字詩」何佩玉
「十三夜」原采蘋
「関山月」李白 
「岐陽」元好問
「九月九日憶山東兄弟」王維
「鵲」絶海中津
「短歌行」曹操
「原爆行」土屋竹雨
「兵車行」杜甫
「白羽扇」白居易
「送王十八帰山寄題仙遊寺」白居易
「暮春侍宴冷泉院池亭同賦花光水上浮」菅原文時
「過元家履信宅」白居易
「梅花」王安石
「無題」小池純代
「二月十一日崇国寺踏月」袁宏道
「贈陳商」李賀
「偶然作」袁枚
「瘞梓人詩」袁枚
「春中与盧四周諒華陽観同居」白居易
「尋胡隱君」高啓
「春日偶成 其十」夏目漱石
「夢長」王安石
「江雪」柳宗元
『紅楼夢』第五十二回より抄出 曹雪芹
「正月」李賀
「秋夜宿僧院」劉得仁
「寄近侍美妾」一休宗純